熱中症・暑さ対策の基礎知識
このコラムでは熱中症に関するテーマを中心に連載していきます。
なぜ人は熱中症になるのでしょうか?
熱中症とは、暑さによりヒトの身体が本来備えているホメオスタシス(身体の状態をある一定の範囲に保つ機能)が破綻し、体温の上昇や自律神経、内分泌の異常をきたす病気です。体温上昇や脱水症状から、痙攣、意識障害として現れ、最悪の場合、死に至る非常に怖い病気でもあります。
人は暑い環境の中では、汗をかいたり、血管を弛緩し皮膚表面に血流を集めるなどして、体の中の暑さを放出して体温を保とうとします。しかし、何らかの理由でこの体温を調節する機能が働かなかったり、身体が調節をしても間に合わない状況になったりすると、熱中症発症リスクが急激に高まります。
そうならないためにも、こまめに水分・塩分を補給し、なるべく涼しい環境に身を置いたり身体を冷やす努力をしたりして熱中症から身を守りましょう。
暑い日の方が熱中症になりやすい?
熱中症は、暑い環境の中で身体の体温調整バランスが崩れることで発症するので、確かに暑い日は熱中症になりやすいです。しかし、必ずしも一番暑い日に熱中症患者が最も多くなるとは限りません。むしろ、まだ身体が暑さに慣れていない初夏や、湿度の高い蒸し暑い日は、身体の体温調節機能が十分に機能せず、体調を崩しやすく、熱中症にかかりやすいタイミングといえます。まだ暑さに慣れていない季節の変わり目や、天気が急に暑くなるときは、暑さを避け、水分・塩分をこまめに補給するなどして熱中症に備えましょう。
建物の中にいれば熱中症にはならない?
屋内でも熱中症になり得ます。
熱中症は暑い日中に屋外で発症するイメージを抱きがちですが、実は屋内にいても熱中症を発症するケースは少なくありません。
平成30年~令和4年の熱中症による救急搬送状況のうち、発生場所別の救急搬送人員では住居が最も多く、約40%は屋内で発祥しているとの調査報告があります。
作業場や作業者に対する温度管理や作業の体調管理をしっかり行うことで、予防を徹底する必要があります。
屋内作業で熱中症になりやすい場所
・炉の近くなど特定の熱源から近いところでの作業
・高温多湿の室内環境での作業
・炉前作業
・溶接作業
・食品加工工場における釜や乾燥機前での作業
(厚生労働省の調査による)
上記のように工場には同様の現場が多く見られます。また、エアコンがついていても、エアコン自体が壊れていたことで作業員が熱中症を発症したケースもあり、作業環境には常に注意を払っておく必要があります。
「令和4年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況 」(消防庁)より抜粋