産業医科大学 人工気候室
前室=気温28℃ 相対湿度50%
実験室=気温40℃ 相対湿度50% ⇒ WBGT値 : 34
※WBGTとは熱中症を予防することを目的とした指標。
人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目し、人体の熱収支に与える影響の大きい湿度、日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境、気温の3つを取り入れた指標です。
(参考:環境省 熱中症予防情報サイト)
健全な20代男性 17名
前室・人工気候室で安静座位(各10分)の後、運転を見立てた2.5Wのハンドルエルゴメーター運動実施。
同条件下において各項目測定
・ 冷却シートあり
フォークリフト座席+COOLEXシート(水温設定7℃)
・ 冷却シートなし
フォークリフト座席のみ
※夏用長袖作業服
※運動負荷 : 2.8Mets(上腕エルゴメーター)
/下限設定2.5W※1
直腸温(熱電対)
食道温(熱電対)
心拍数(BSM-2401、日本光電工業)
推定発汗量(実験前後の体重変化量)
プロトコール
プロトコール
運動開始後、「冷却シートあり」と「冷却シートなし」で明らかな温度傾向の違いが見られた。
「冷却シートなし」では運動開始10分後から緩やかに上昇したが、「冷却シートあり」は上昇が軽度で37℃前後を保った状態であった。
また「冷却シートなし」は運動終了後もしばらく温度上昇が続いたが「冷却シートあり」では正常状態に戻る兆候が見られ、有意に低かった。
運動開始直後からいずれの条件でも速やかに上昇した。
「冷却シートなし」の方が上昇傾きが急峻で、運動終了直後で「冷却シートあり」との有意差を認めた。
運動開始直後からいずれの条件でも速やかに上昇し、終了とともに低下した。
運動終了直後、運動終了5分後の心拍数は「冷却シートあり」の方が、「冷却シートなし」よりも有意に低くなった。
実験前後の体重を測定し、体重変化量から発汗量を推定した。
「冷却シートあり」の方が「冷却シートなし」に比べて約25%発汗量が少なかった。
直腸温及び食道温といった深部体温は「冷却シートあり」が「冷却シートなし」と比較して低くなっており、COOLEX-Vシリーズによる深部体温上昇抑制効果があったと考える。
水温を継続的に低温に保てるチラーの強力な冷却効果と十分な冷却面積によって効果が発揮されたものと考える。冷却範囲が背中から骨盤、大腿と内蔵と筋肉、血液量の多い部位を冷却している点も効果があった要因の1つと推測される。
「冷却シートあり」では深部体温の上昇が抑制されたことに加え、推定発汗量も少なく、循環血漿量が保たれたことから、心拍数の上昇も見られなかったと推測され、身体負荷も軽減されると考えられる。
運動負荷が高い条件(荷役などの身体負荷が高い作業)の場合は「冷却シートあり」と「冷却シートなし」で有意差が拡大していた可能性もある。
チラーを用いたシートクーラー(COOLEX-Vシリーズ)による暑熱環境下で運動時の深部体温・心拍数の上昇抑制効果及び推定発汗量の軽減が見られた。
運転作業における熱中症予防効果が期待できる。
(産業医科大学 産業生態科学研究所
監修2024年)
※1
・METs(metabolic equivalents)
運動や身体活動の強度を表す一般的な指標。
METs = 運動時のエネルギー消費量/安静時のエネルギー消費量
(独)国立健康・栄養研究所による改訂版「身体活動のメッツ(METs)表」における運転作業のMETsは右の通りである。