はじめに
このコラムでは熱中症に関するテーマを中心に連載していきます。
今回は熱中症の症状について、ステージごとに見ていきます。
熱中症の分類とは?
日本救急医学会(JAAM)が作成した「熱中症診療ガイドライン2015」は、日本でのこれまで行われた分析や研究に基づき、熱中症の疫学、発生条件、診断基準、診断、予防や治療法、重症化の因子に至るまで網羅されたガイドラインとなっており、現在も多くの指針や安全教育の場で活用されています。このガイドラインの中で、熱中症は重症度に応じてステージ1~3の3つに分類されています。
熱中症のステージ1について
ステージ1は軽度の症状で、発症者の様子を見守りながら現場で回復処置を施すレベルの症状です。具体的な症状には、めまい、立ちくらみ、生あくび、大量の発汗、筋肉痛、筋肉硬直などがあります。
めまい、立ち眩み、なまあくびは熱失神の症状といわれ、体内の熱を冷却する為に血流が皮膚表面に集中し、また汗により脱水状態になることで、血圧が低下し、脳への血流量も減少し、このような症状を発症します。筋肉痛、筋肉硬直は熱けいれんの症状といわれ、大量の汗をかいた結果、血中ナトリウム濃度が低下し、筋肉が収縮することで発症します。対処方法としては、涼しい場所へ避難しての安静、体表面の冷却、経口による水分、ナトリウムの補給になり、回復するまで様子を見守る必要があります。
熱中症のステージ2について
ステージ2の症状は、ステージ1よりも重く、医療機関の診察が必要となる、中程度の症状と定義されます。具体的な症状は、頭痛、嘔吐、倦怠感、判断力の低下などが現れ、「熱疲労」の症状に分類されます。
できるだけ早く医療機関へ搬送する必要があり、ステージの2の状態のまま放置してしまうと、患者の状態は重症化し、最も重篤な状態、すなわちステージ3へと悪化する可能性が非常に高くなってしまいます。
ステージ2の段階での応急処置は、患者への水分、塩分の補給、涼しい場所への退避、身体への直接冷却になります。また、医療機関搬送後に輸液の処置を行うこともあります。適切に処置を行えば容易に回復しうる段階ではありますので、そのような症状の人を見かけたら、慌てずに医療機関へ搬送し、いち早く適切な処置を行うことが重要です。
熱中症のステージ3について
ステージ3の症状は、熱中症の症状の中でも最も症状の重い状態になり、「熱射病」と分類されます。できるだけ早い入院・加療が必要な状態です。体温が40℃を越え、意識障害が現れ、最悪の場合死に至る深刻な症状となります。ガイドラインでは、意識障害、腎臓・肝臓機能障害、血液凝固異常の3つのうち、いずれか一つを含むとしていますが、その判断は医師により判別することになります。もちろん、現場に医師がいるとは限りませんので、熱中症の症状が出ていると認められれば、ステージに関係なくまずは近くの医療機関で診察を受けるようにしなければなりません。ステージ3の症状では、すでに重い臓器障害が認められるため、そのまま放置した場合、死に至る恐れが高い恐ろしい病気です。また、後遺症が残ったり、持病のある人の場合、合併症を発症してさらに深刻な症状を引き起こす可能性もありますので、決して安易に考えてはいけません。
熱中症は条件が合えばだれでもなりうる病気の為、日頃から水分、塩分の補給、暑い場所を避ける、しっかり休憩をとるなどの対策をきちんとしなければなりません。きちんと睡眠をとっているか、朝食は抜いていないか、深酒をしていないか等、今一度自身の生活習慣を見直してみることも重要です。