熱中症・暑さ対策の基礎知識 WBGTとは?

2024.09.01 コラム

はじめに
このコラムでは熱中症に関するテーマを中心に連載していきます。
今回は熱中症・暑さ対策の基礎知識として、WBGTについて詳しく見ていきましょう。

WBGTはどのような指標?

7月のコラムでも少し出てきましたが、暑さ指数=WBGT(湿球黒球温度、Wet Bulb Globe Temperature)は熱中症を予防することを目的に1954年にアメリカで提案された指標です。主に人体の熱収支に与える影響の大きい湿度、輻射熱、気温の3つの要素をもとに算出し、熱中症リスクを可視化しています。WBGTの単位は摂氏気温と同じ摂氏(℃)を用いますが、その意味は気温とは異なり、熱中症のリスクを測る目安として使います。具体的には、WBGTが28℃を超えると熱中症の発症率が急増するため、作業や運動を中止する条件にあるかどうかの判断など、現場での熱中症回避のための判断基準として重要な役割を担っています。

WBGTはどのように算出する?

暑さ指数(WBGT)は、専用の測定装置を用いて黒球温度、湿球温度、乾球温度を測定し、その値をもとに算出します。
●黒球温度(Globe Temperature)は、黒色に塗装された薄い銅板の球の中心に温度計を入れ、輻射熱を観測します。
●湿球温度(NWB:Natural Wet Bulb temperature)は、水で湿らせたガーゼを温度計の球部に巻いて観測します。
湿球温度は、水が蒸発した時に熱を奪う現象(気化放熱)により、周囲の空気が湿度100%でない限り、先端をガーゼで覆わない温度計よりも温度が低くなります。すなわち湿球温度が示す値は、湿度と気温を加味した数値です。
●乾球温度(NDB:Natural Dry Bulb temperature)は、通常の温度計を用いて、そのまま気温を観測します。気温そのものを意味します。

それらを下記の式に代入し、そのWBGT値(℉/℃)を算出します。WBGT値は、観測時の条件によって二つの式があります。
1)屋外での算出式
WBGT(℉/℃) =0.7 × 湿球温度 + 0.2 × 黒球温度 + 0.1 × 乾球温度
2)屋内または、曇りで太陽光が出ていない時の算出式
WBGT(℉/℃) =0.7 × 湿球温度 + 0.3 × 黒球温度
算出式からわかるように、WBGTを算出するにあたって、湿度が重要な指標となっています。これは、湿度が高いと、汗が蒸発しにくくなるため、体温が下がりにくく、熱中症にかかるリスクが高くなるためです。

WBGTはどのように活用する?

危険なWBGT温度は、WBGT温度28℃以上で、すべての生活活動で熱中症のリスクがあるとしており、外出はもちろん、室内にいても涼しい環境を確保するように注意喚起されています。特にWBGT31℃以上は、高齢者の場合安静にしていても熱中症になるリスクが高いとしており、最大レベルの警戒が必要なことがわかります。WBGT温度25℃から28℃の温度帯は警戒レベルとし、運動や激しい作業の場合には必ず休息をいれ、水分や塩分をしっかり補給するように指導しています。WBGT25℃未満であっても、身体を激しく消耗する運動や作業の場合、熱中症になり得るため、決して無理しないこととしています。

日本で広く一般的に用いられている「日常における熱中症予防指針」について見てみると、こちらは日本生気象学会により取りまとめられた熱中症予防指針で、厚生労働省をはじめ、多くの公的機関が日常生活における熱中症予防の指針として利用しています。この指針では、熱中症のリスクについて、WBGTの環境条件に加えて、体調や年齢といった身体的条件と、行為の負荷(運動中であったり、仕事中であったりすると負荷が高くなります)を加味して危険度を4段階に分け、わかりやすく注意喚起しています。
また、環境省が「熱中症予防情報サイト」というホームページを開設しており、全国のWBGT値を確認できるようになっています。こちらを用いて学術団体・業界団体等が、日常生活やスポーツ、労働作業への指針を作成し、熱中症予防対策として活用しています。
WBGTは、熱中症予防を評価するうえで、大変重要な指標となっています。暑い環境下では、しっかりと自分の体調や環境に向き合い、熱中症を未然に防ぐことが何よりも大切です。

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