熱中症・暑さ対策の基礎知識 暑熱ストレスとは?

2024.07.01 コラム

はじめに
このコラムでは熱中症に関するテーマを中心に連載していきます。
今回は熱中症・暑さ対策の基礎知識として、暑熱ストレスについて詳しく見ていきましょう。

暑熱対策ストレスとは?

人間の身体には状態を正常に保とうとする働きがあり、ホメオスタシスと呼ばれています。体温調節もホメオスタシスの一つで、正常な状態を保とうとする働きにより、寒いときには体が震え、暑いときに汗をかくことで、体温を一定に保とうとします。体温について、この安定した状態の体温を基準値とすると、暑熱ストレスとは、体内に熱が蓄積され基準値よりも高い値になった状態であり、逆に基準値よりも体が冷たい場合には寒冷ストレスを受けている状態にあるといえます。熱の蓄積が体温の正常値を超えると暑熱ストレスを受けている状態となり、さらに進行していくと熱中症を発症するということが言えます。

暑熱ストレスを受け続けるとどうなる?

暑熱ストレスを受け続けるということは、体の中に熱がどんどんたまっていくことを意味します。熱がたまり、やがて人の身体が快適と感じる温度帯を越えて帯内の温度が上昇し、生理的、心理的負担が生じてきます。この温熱負担のことを、暑熱ストレインといい、生理的ストレインと心理的ストレインに分けられます。おおまかにいえば、生理的ストレインとは、体温上昇、心拍数増加、発汗増加による体重減少などの生理的反応であり、心理的ストレインは、暑熱感、不快感などの心理的反応といえます。これらの反応は、暑熱環境での作業者にとっては作業を安全に進めることに対しての妨害要因となり、仕事に集中できなくなり、作業効率が落ちたり、事故を誘発する原因になり得ます。また、熱中症を発症する直接的な要因でもあり、いかに暑熱ストレスを軽減し、暑熱ストレインを小さくしていくかが、酷暑環境における作業環境改善の基本的な考え方といえます。

周囲の暑熱ストレスを評価するには?

暑熱ストレスをきちんと把握するためには、①気温②湿度③輻射熱④風速の4つの温熱要素の測定をし、さらに、身体活動の強度と着ている服装の熱特性についても考慮する必要があります。これらの温熱要素をすべて考慮した暑熱ストレス指標としてWBGT(Wet Bulb Globe Temperature)指標があります。暑さ指数(WBGT)は労働環境や運動環境の指針として有効であると認められており、ISO等で国際的にも規格化されています。 日本でも、スポーツの分野では「熱中症予防運動指針」として、また、日本生気象学会では「日常生活に関する指針」として、WBGTを活用して公表しています。労働環境では、国際的にはISO7243、日本では、JIS Z 8504「WBGT(湿球黒球温度)指数に基づく作業者の熱ストレスの評価-暑熱環境」として規格化されています。WBGTは大変重要な指標になりますので、多くの職場で使用されています。

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