作業者の身体を直接冷却するCOOLEX-Pro
「作業空間環境を快適にする」をミッションとする株式会社鎌倉製作所は、環境温度55℃で使用できる新しい冷却ソリューションを開発しました。開発の背景や製品の特長などについて、同社取締役COOLEX事業部長の山坂昇氏に話を聞きました。
過酷な環境下での作業者の負担を減らしたい
㈱鎌倉製作所では屋上換気扇、送風機、気化放熱空気冷却器などを製造・販売しています。「高温になる装置の近くなど、熱源の側で作業する必要がある場合、従来の空調機器で作業者の周囲を冷却する方法には限界があります。氷を内蔵できるベストは冷却時間が短く、ファン付きの作業服では環境温度以下に冷却することはできません。そこで、チラー(冷却水循環装置)を利用した水冷方式で作業者の身体を冷やす方法を採用しました。」(山坂氏)
電力で冷却水を作るチラーを使用することで、環境温度に左右されることなく冷却することが可能です。また、冷却水の温度を調節することもできます。
「快適な作業空間の実現は、生産性向上や安全性向上につながることに加え、人手不足の解消にも貢献できると思います。」(山坂氏)
空調機メーカーがウェアの開発に挑む
「COOLEX(クーレックス)」の開発を始めた2016年当時、産業機器メーカーの同社にはウェア開発のノウハウがありませんでした。そこで、アパレル製品の開発をサポートする都産技研のデザイン技術グループに相談しました。ヒアリングを行ったのち、製品化のためのデザイン案を作成し、具体的な型紙設計、生地、材料選定、裁縫仕様などの総合的な製品化支援を受けて冷却ウェアの形が完成しました。
「騒音測定や恒温恒湿室など都産技研の様々な試験を活用しました。」(山坂氏)
開発した個人用の冷却ソリューション「COOLEX」は、現在あらゆるニーズに合わせた製品がラインアップされています。
「導入企業には事前に製品の効果を試用してもらっています。その際に実際の作業環境も確認し、製品に現場のニーズを反映しています。」(山坂氏)
環境温度55℃で使用できる防水防塵使用
「COOLEX」の導入分野は多彩です。
「鉄工所などの高温熱源が近くにある現場はもちろん、発酵など安定した温度環境が必要な現場、溶接や塗装など送風が作業の邪魔となる現場などでは、作業者だけを冷却するCOOLEXはとても有効です。食品を扱うユーザーからはウェアだけでなく、チラーも洗浄できる製品が欲しいというニーズがありました。」(山坂氏)
そのようなユーザーのニーズに応えた新製品が「COOLEX-Pro」です。保護等級IP55に準拠した防塵・防水性能を備え、使用できる環境温度も従来の50℃から55℃に引き上げています。
「使用可能な環境温度が55℃の高温でも安定した運転が可能になります。また、防塵仕様なので、粉塵などが発生する生産ラインなどでも安心して使えます。防水仕様としたことで、清潔さが求められる場所でも使用できます。」(山坂氏)
COOLEXはチラーとウェアの間で冷却水を循環する必要があるため、両者をホースで接続する必要があります。
「現在でもチラーを携帯するバックパックタイプの製品をラインアップしています。今後はチラーの小型化やバッテリー駆動時間の延長などに取り組んでいく予定です。」(山坂氏)